チェックシート8


1. 現像反応は,現像核上で現像主薬が [ 1 ] される反応であるとみなせる.このとき現像主薬からハロゲン化銀に [ 2 ] の注入がおこり,ハロゲン化銀は [ 3 ] される.
2. 上記の反応は,現像核を微小な [ 4 ] と見なし,現像液と接する側では [ 5 ] 反応,ハロゲン化銀と接する側では [ 6 ] 反応がおこると考えることができる.
3. このとき,電極である現像核はある電位を持つことになり,これを [ 7 ] と呼ぶ.
4. 熱力学的な意味では,ある還元剤が現像をおこせるかどうかは,その還元剤の [ 8 ] と 5 の [ 9 ] との兼ね合いが重要である.
5. 4 の条件を満たしていても,実際には現像に使えないものもある.その理由を述べよ.
6. A = A+ + e という酸化還元対考える (標準電極電位 0.300 V vs SHE).今,25 ℃ において [A] = 0.100 M,[A+] = 0.0100 M を含む溶液に白金電極を挿しこみ,その電位を 0.280 V vs SHE になるように外部回路から電圧を印可した.このときに流れる電流はカソード電流かアノード電流か,理由を付けて述べよ.


解答とコメント
穴埋め

[ 1 ] 酸化
[ 2 ] 電子
[ 3 ] 還元.電子のやりとりの仕方と酸化還元という用語の対応をきちんと理解すること.
[ 4 ] 電極
[ 5 ] アノード反応.酸化反応でもよいが,電極モデルの意味合いをはっきりさせるために,アノード反応とした方がよりよいだろう.
[ 6 ] カソード反応
[ 7 ] 現像電位
[ 8 ] 標準酸化還元電位.あるいは標準電極電位.電流電位特性という答も見られたが,間違いではない.
[ 9 ] 現像電位

記述
5. 現像とはそもそも露光を受けて潜像核を形成することのできたハロゲン化銀粒子を他の粒子よりも選択的に速く還元することによって成立している.つまり,潜像に対して電子注入をおこすことが必要である.すなわち,そのような選択性を持たずに,潜像の有無に無関係にハロゲン化銀粒子を直接還元してしまう還元剤 (たとえば dimethylamineborane,還元増感やカブリ核生成に使われる) は現像主薬とはなりえない.またハロゲン化銀粒子はゼラチンバインダー中に保持されているので,潜像核上にはゼラチンなどが吸着している.現像主薬の酸化は潜像核上でおこる不均一反応であるから,現像主薬がこれらの吸着物を押しのけて潜像核表面に到達できなければ現像はおこらない.この例はアスコルビン酸で,通常の条件ではアスコルビン酸単独の水溶液は現像主薬として機能しない.モデル系では,ゼラチンの存在下では銀電極を用いた電気化学反応 (アノード過程) も極めて強く抑制され,アスコルビン酸はゼラチンを押しのけて潜像核 (銀電極) に到達することができないことを示している.

6. この酸化還元系についての Nernst の式を考える.この溶液に白金電極を挿入してその電位を測定する (コントロールダブルジェット法の項で電位測定法には触れた) と,その電位 E は,
E = Eo + (RT/nF) ln([A+]/[A])
で表されるので,与えられた条件を代入すると E = 0.231 (V vs. SHE) が得られる.この状態は平衡状態であり,外部回路に電流は流れていない.
この状態から外部回路による電圧印可によって E = 0.280 V を強制的にかけるということは,ln([A+]/[A]) の項が印可前より大きくしようとしていることに対応することになるから,A+ が増加し,A が減少するような変化をおこそうとすることになる.この反応は,A が電極に電子を渡して A+ になることで達成されるので,アノード電流が流れることになる.