10月8日分 復習と練習問題
1. 原子,あるいは分子の中の電子のエネルギーは [ 離散化 ] しており,その準位間の遷移に対応して電磁波の吸収,放出がおこる.
2. 電子遷移による吸収,発光は主に [ 紫外・可視 ] 領域で観察されるので,これらを調べることでその物質の [ 電子構造 ] に関する情報を得ることができる.
3. 透過率 10% の ND フィルターを2枚重ねたときの,正味の透過率と吸光度を求めよ.
ND フィルター (neutral density filter) は減光フィルターともいい,中性灰色のフィルターのこと.理想的にはどの波長でも同じ吸収を示し,色バランスを変化させずに光量を減少させるフィルターである (実際のものは完全に中性灰色というわけではない).
強度 I の光はフィルターを1枚通過した時点で 0.10 I に減衰し,さらにもう1枚を通過することで
0.10×(0.10I) = 0.010 I に減衰する.すなわち,I が 0.010 I になったので正味の透過率は 1.0%.
また -log0.010 = 2.0 なので,吸光度は 2.0.
あるいは1枚の吸光度は - log 0.10 = 1.0 なので,2枚重ねると 1.0 + 1.0 = 2.0 の吸光度になり,10^-2.0 = 0.010 = 1.0% の透過率になる.
4. ある色素の 1.0×10-5 mol dm-3 溶液のある波長での吸光度を光路長 1.0 cm のセルで測定したところ 0.73 という値が得られた.この測定を光路長 1.0 mm のセルで行うと,吸光度はいくつになるはずか. この色素のこの波長でのモル吸光係数を求めよ.
Lambert 則から同一の溶液については光路と吸光度は比例するから,光路長 1.0 mm のセルでは 0.73×1.0/10 = 0.073 の吸光度を示すはずである.
Lambert-Beer 則 A = ε c l に各数値を代入すると,0.73 = ε×1.0×10-5×1.0 となるので,
ε = 7.3×104 mol-1 dm3 cm-1.
単位に注意すること (dm3 = L である).
単位系が首尾一貫していなくて,変な単位ではあるが,こう取ったものが習慣的に広く使われている.系統性・一貫性を考えるなら,長さは m で (つまり体積も m3 で) 取るべきではある.