10月15日分 復習
1.  分子内の原子間の結合には [ ばね ] に似た性質があり,原子は互いに束縛しあいながら分子内で [ 振動 ] している.
2.  分子内振動もまた [ 量子化 ] されており,その準位間遷移に対応する [ 電磁波吸収 ] が [ 赤外 ] 領域にある.
3.  炭素-水素結合の伸縮振動が 2900 cm-1 に観測されたとして,結合の力の定数を求めよ.
吸収波数を n (HTML では上にバーなどを表示できないので,講義中の記号と違うので注意) とすると,次式が成立する.
n = [1/(2πc)][f・{(1/mA) + (1/mB)}]1/2
ここに数値を代入していくのだが,単位をあわせるときに要注意.ここではすべて SI に統一することにする.波数は cm-1 で与えられているので,これは m-1 にする.したがって,数字は 102 倍される.原子質量は1原子の絶対質量を kg 単位で用いる.たとえば炭素原子ならば (12.0×10-3) / (6.02×1023) kg である.原子量を Avogadro 定数で割っただけでは,単位が kg にならないことに注意.
得られる力の定数 f は 4.6×102 kg s-2 となる.単位が変なようだが,バネ定数の次元は「長さあたりの力」であるから,たとえば N m-1 という単位を持ち,これを基本単位に分解すれば,N m-1 = kg m s-2・m-1 = kg s-2 であるから,何もおかしくないことがわかる.
4.  有機分子の官能基はそれぞれに特徴的な [ 赤外吸収ピーク ] を持ち,これを利用して分子構造についての情報を得ることができる.
5.  現在,高感度,高分解能という特徴をもつ [ FT-IR ] と呼ばれる方式の装置が普及しつつある.
6.  ラマン散乱もまた [ 分子内振動 ] に関する情報を含んでおり,[ 赤外吸収スペクトル ] とは異なった特徴を持っているため利用が広まりつつある.
分子内振動 のところに「分子構造」と入れた人が多かったが,それは確かに間違いとは言えないが,ラマン散乱でわかることを明示することを考えてほしかった.