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■概要
当研究室は銀塩写真材料 (処理システムを含む) とそれらに関連する材料科学がもともとの研究対象です.
銀塩写真は幅広い分野の基礎科学に立脚して作られているきわめて巧妙なシステムであり, 最近流行の「ナノテクノロジー」の広範な分野で,科学的基盤を共有しています.
当研究室では,これらの基礎を踏まえて,銀塩写真関係にとどまらず, さまざまな応用分野に展開を図りたいと考えています.

大きく掲げる研究テーマは 「ナノスケール素材と電気化学の奏でる協奏曲」です.

イメージはこんな感じ.
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現在の研究対象は幅広いのですが, などがあげられます.
これらのテーマは相互に深く関係しており,いくつかにまたがるような研究課題もふつうです.

研究手法としては,電気化学,コロイド化学の技法を基礎に置いたものが中心です.
モノを産み出す,あるいはモノの特性をきちんと把握し,理解することは,けっして簡単なことではありません.研究には多くの機器 (原始的なモノから最先端機器まで) を用いますが,単に機器を使う以上に,各人の創意工夫が求められます.

研究室としては,個々人の自主性と創意を大切に,基本をしっかりと押さえる経験を積んで欲しいと願っています.




現有機器等


銀塩写真現像法によって得られる銀ナノフィラメントを白金錯体で処理することで白金と銀からなる中空のナノ構造体が得られます.この構造は先に報告した金を導入した系によく似ていますが電気化学的特性はまったく異なり,中性領域でもアルドースに対する高い電解酸化活性を示すことがわかりました.
*Y. Okawa, S. Furuya, and F. Shiba, "Formation of Platinum-Silver Nanostructure with Hollow Filament Structure Using Techniques Based on Photographic Chemistry and Its Electrocatalytic Behavior for Aldose Electrooxidation", J. Electroanal. Chem., 908, 116096 (2022).[doi:10.1016/j.jelechem.2022.116096]


電極上に直接ナノ構造体を直接生成する方法として,電気化学的方法と写真現像を組み合わせる方法を検討しています.金属銀からなるフィラメント状の集合体の直接生成に成功しており,生成過程の解析,最適化,電極触媒としての機能などを調べています.
*Y. Okawa, S. Saito, and F. Shiba, "Direct formation of nanofilament structure of metallic silver on electrode with combination of electrochemical and photographic techniques," Chem. Lett., 48, 274-276 (2019). [doi:10.1246/cl.181004]


銀塩写真はハロゲン化銀を感光材料に用いています.通常の現像過程ではハロゲン化銀はナノスケールのフィラメント状の金属銀に還元されます.さらにこれを金錯体溶液で処理する(この処理も銀塩写真で使われている方法がベース)と,中空状の金銀ナノ複合体が生成することを見いだしました.この複合体は fructose dehydrogenase という酵素の電子移動に対して非常に良好な直接電子移動媒体として機能することを見出しました.
*Y. Okawa, T. Shimada, F. Shiba, "Formation of gold-silver hollow nanostructure via silver halide photographic processes and application to direct electron transfer biosensor using fructose dehydrogenase," J. Electroanal. Chem., 828, 144-149 (2018). [doi:10.1016/j.jelechem.2018.09.044]



金ナノ粒子と酸化還元酵素を組み合わせて電極上に固定化することで,酵素と基板電極の間の電子移動をスムーズにおこせる場合があります.とくに本研究室で見出した方法は,きわめてシンプルな方法で作成されているにもかかわらず,優れた性能が得られ,高性能なバイオセンサとしての可能性が示されています.その本質を見極め,応用につなげる研究を行っています.その応用として,二種類の酵素を用いることで,それらの反応を組み合わせ,高性能なセンサが作製できます.
*Y. Okawa, N. Yokoyama, Y. Sakai, F. Shiba, "Direct electron transfer biosensor for hydrogen peroxide carrying nanocomplex composed of horseradish peroxidase and Au-nanoparticle - Characterization and application to bienzyme systems", Anal. Chem. Res., 5, 1-8 (2015).[doi: 10.1016/j.ancr.2015.05.001]
*Y. Okawa, Y. Sakai, F. Shiba, "Reagentless H2O2 biosensor with high electron transfer efficiency carrying nanocomplex of horseradish peroxidase and Au-Nanoparticle", Electrochemistry, 76,522-524 (2008).[doi: 10.5796/electrochemistry.76.522]


この写真は新しい構造の電気泳動表示素子です.
表示デバイスとしての特性はまだまだ足りませんが,二色の電気的な切り替えという基本的な動作に成功しています.
文字表示は文字型の電極を使っているので,白字と青字の差が本来のコントラスト差になるはずです. このデバイスの作製には,これまでの銀塩写真材料に対する研究成果がさまざまな形で利用されています.
*大川祐輔, 三宅佳郎, 柴 史之, "ゼラチンで包括固定化された粒子内包液滴を用いる 電気泳動表示素子の試み", 日本写真学会誌, 68, 538-540 (2005). [doi:10.11454/photogrst1964.68.538]


無機微粒子を使ったエレクトロクロミック表示素子です.
写真用ハロゲン化銀のような特性のそろった微粒子を使えれば,さまざまな用途で性能向上が図れるはず. そのようなコンセプトで作られた準単分散微粒子を使っており,電気化学的な着消色が可能です.
電極上に発色層を形成するのも,粒子分散液を塗布・乾燥するだけでよく,蒸着などの手のかかる方法も必要ありません.
*F. Shiba, M. Yokoyama, Y. Mita, T. Yamakawa, Y. Okawa, "Hydrothermal synthesis of monodisperse WO3・H2O square platelet particles", Mater. Lett., 61, 1778-1780 (2007). [doi:10.1016/j.matlet.2006.07.129]