6. 微分容量測定

ここでは微分容量測定を扱う.また,WaveForms のスクリプトを用いた自動測定の利用例も紹介する.

微分容量測定は,電極-溶液界面の状況を調べるひとつの方法である.金属電極であれば電気二重層容量に対応し,電極表面に分子やイオンが吸着すると変化がおこるため,吸着状態についての評価に利用できる.半導体電極では空乏層容量を評価することに利用でき,フラットバンド電位やドープ濃度の評価に利用できる.測定としてはインピーダンス解析の一種だが,電気化学インピーダンス測定では,通常,電極反応が進行する状態で,電位を固定して周波数による変化を測定するのに対し,ここではファラデー反応のおこらない充電領域において,周波数を固定して容量成分の電位依存性を測定する.


使用できるポテンショスタットについて

交流応答を測定するので,ポテンショスタットの周波数特性を評価しておく必要がある.方法は 前節 と同じである.測定に用いる周波数は 1 kHz 程度が多いので,この程度まで測定ができるものが適当であるが,使用するポテンショスタットが追随する程度に測定周波数を落としてもよい.


測定

Analog Discovery とポテンショスタットとの接続は,
2節 の接続法にする (前節の電気化学インピーダンス測定とは異なる).
WaveForms の起動画面から Impedance を選択する (あるいは Welcome の [+] > Impedance).

以下,Fig. 6.1 (右図) を参照.
  • [Meter] タブを選択
  • W1-C1P-DUT-C1N-C2-R-GND を選択
  • 周波数は,測定可能な範囲で適当に選択
  • Model 欄.Series を選択.
  • Amplitude 欄.変調電位振幅.通常 10~20 mV 程度に設定する.小さい方がよいが,測定精度との兼ね合いがあるので,この程度がよいだろう.
  • Offset 欄.設定電位.必要な電位に設定する.
  • Resister 欄.ポテンショスタットの電流感度に対応して,電流感度の逆数を設定する.たとえば感度設定が 1 mA/V であれば,1 kΩ (Ω = V/A に注意) を設定する.
Fig. 6.1 測定パラメータの設定


測定例

このようにして得られた測定結果の例を Fig. 6.2 (右図) に示す.
この図は n型半導体である ITO 電極の Mott-Schottky プロットである (電解液は 0.1 mol L-1 KNO3).半導体電極の空乏層バイアス下での微分容量の電位依存性に対応し,この傾きから半導体のドープ濃度,電位軸切片からフラットバンド電位を求めることができる.
この測定では,測定対象に CR の直列回路を仮定して解析を行っている (Model に Series を採用している).そのため,ファラデー電流が流れるようになると (C に有限の並列抵抗成分が入るようになると) 正しく微分容量を求められない.Fig. 6.2 の場合,電位の低い領域 (0.0 V 以下) では溶存酸素還元のファラデー電流が流れ始めており (このデモでは脱酸素していない),その影響で C の値が正しく評価できなくなるため,Mott-Schottky 式の直線からずれてくる.

Fig. 6.2 微分容量測定から作成した Mott-Schottky プロットの例

スクリプトを用いた自動測定

WaveForms のインピーダンス測定では,周波数の自動変化を行うことはできるが,電位変化を自動で行う機能はない.そのため,上述の測定は,電位を1点ずつ手動で設定して,測定結果も1点ごとにどこかに転記するという方法を取っている.
この測定を半自動化するため,WaveForms のスクリプト機能利用することができる.

以下,作業手順.


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