電気化学反応を利用した電子ペーパーの研究

エレクトロクロミズムを利用したフルカラー電子ペーパーの研究

関連分野 - 電気化学、有機化学、高分子化学

エレクトロクロミズムと電子ペーパー

 物質の色は、その物質が持つ"電子状態"によって決まります。従って、物質から電子を取り除く、若しくは電子を注入し電子状態を変化させることで、その物質の色を変化させることが出来ます。

 このような電子の出し入れ、つまり電気化学的な酸化還元反応によって、物質の色が変化する反応を「エレクトロクロミズム(EC)」と呼びます。

 私達の研究室では、エレクトロクロミズムを用いた電子ペーパーの研究開発を行っています。電子ペーパーは、紙に代わる次世代の表示デバイスです。電子デバイスのように何度も書き換えることが出来、かつ紙のように目に優しくフレキシブルな表示を実現します。

 そこで私達は、電子ペーパーを構築する発色層や電解質層、電極修飾など様々な要素材料、要素技術の研究を行っています。例えば、分子設計が容易な有機材料をエレクトロクロミック材料として用いることで、フルカラー表示が可能となります(図1)。

 また、導電性高分子材料を電極固定することによって、エレクトロクロミック素子の弱点であった応答速度の改善や、耐久性の向上も可能です。更には、電極を加工することでマトリックス表示による情報表示も可能です。

 私達はこれらの研究を通して、電気化学、有機化学、高分子化学の知識を中心に、表示・画像分野の最前線を開拓しています。

図1 有機EC材料を用いた三原色表示

 

無機材料を用いたEC型電子ペーパーの研究

関連分野 - 電気化学,無機化学,ナノ粒子

無機材料とエレクトロクロミズム

 電気化学的な酸化還元反応により引き起こされる可逆的な物質の色変化現象は、エレクトロクロミズムと呼ばれます。この現象は低駆動電圧、低視野角依存性、メモリー性など様々な特徴を有しており、電子ペーパーやスマートウィンドウなどへの展開が期待されています。 

 本研究室では以前よりフルカラー電子ペーパーの実現に向けた研究を行ってきましたが、シアン、マゼンタ、イエローの積層表示では視覚的にも光学的にも十分な黒表示が得られないことが問題となっています(図2)。

 そこで我々は無機エレクトロクロミック材料を用いた透明‐黒表示素子の構築を行っています(図3)。無機エレクトロクロミック材料は電極上への析出/溶解や、ドーピングと呼ばれるイオンの脱着の際に可逆的な光学変化を示し、高い繰り返し耐久性や明瞭な色変化などの特徴を持つため、近年多くの注目を集めています。さらに、これらの材料の選択や機能性の付加により、様々な色の発色や、鏡状態への変化を示す素子の構築も可能です。

 図2 有機材料を用いたフルカラーEC素子

図3 無機材料を用いた透明-黒発色EC素子