交流駆動型電気化学発光を用いた発光・表示素子の研究

関連分野 - 電気化学,光化学,希土類錯体

電気化学発光と交流電圧駆動

 電気化学発光(ECL)とは、電気化学的に生成した発光材料の励起状態から得られる発光現象です。これまでは主に、生体関連物質や化学物質の蛍光センサーとしての研究が盛んでした。

 一方で、ECLを発光材料、ディスプレイ材料の観点から見ると、発光強度が低い、発光応答が遅いといった課題があり普及には至っていません。当研究室では、従来直流電圧で駆動していたECLに、交流電圧駆動を適用することで発光特性が飛躍的に向上することを見出しました。

 その機構を図1に示します。交流電圧駆動では単一電極上で電圧正負の極性が反転するため、同一電極上で発光材料の酸化反応と還元反応が生じます。その後、それぞれが衝突することで電子授受反応が生じ励起状態を生成し発光します(図2)。この機構により、直流駆動と比較して飛躍的に応答速度、発光強度が向上しディスプレイへの展開を視野に入れることが可能となりました。

 また、材料により発光色の選択も可能であり、交流駆動型ECLは次世代ディスプレイへの展開が期待される有望な発光現象と言えます。しかし、駆動機構などにおいてまだ明らかとなっていない部分が存在するため、それらを解き明かし、素子特性を向上させるべく研究に取り組んでいます。